2011年12月06日

『日輪の遺産』

『日輪の遺産』

久しぶりの読後感想文。

これまで、原作を読んだ作品が映画化されても、殆
ど見に行ったことはない。

自分の中のイメージが壊れること、見た後の「ガッカリ」
が嫌で、「原作を超える映画はない」と頑なに信じ
ていて、見に行こうという気にならないのだ。

しかし、初めて「映画を見てみたいな」と思う作品だ
った。
出版社の紹介には、

帝国陸軍がマッカーサーより奪い、終戦直前に隠したと
いう時価200兆円の財宝。

老人が遺した手帳に隠された驚くべき真実が、50
年たった今、明らかにされようとしている。

財宝に関わり生きて死んでいった人々の姿に涙す
る感動の力作。

ベストセラー『蒼穹の昴』の原点、幻の近代史ミステリー
待望の文庫化。


とある。

北上次郎氏の解説にもあるが、200兆円の財宝を
巡る冒険活劇のようなものを期待していると“良い
意味で”裏切られる。

物語は、負債を抱えた地上げ屋の丹羽が、何とか
年越しの為の資金を稼ごうと、府中競馬場を訪れる
ところから始まる。

そこで出会った老人から、マッカーサーの財宝を巡る驚
くべき内容の記された一冊の手帳を託されるが、老
人はその場で息絶えてしまう。

同様の手帳は、仕事の傍ら福祉関係のNPOを切り
盛りする海老沢にも手渡されていた。

2人は手帳に記された事の真偽を確かめるべく、真
柴老人の足跡を追う。

終戦間近の8月10日、26歳の若き将校・真柴少佐
と、東京帝大を主席で卒業した大蔵官僚・小泉主
計中尉、そして中国戦線を長く戦った赤ヒゲの曹長
に軍の最高幹部から与えられた極秘の司令。

物語は、丹羽、海老沢の二人の今と、挿話の形で
3人の将校の行動が交互に語られていく。

3人の帝国陸軍将校たちに、何も知らず極秘作戦
に就かされた20名の少女たちと、担任の野口教諭
が加わると物語は佳境に…

自分の場合『地下鉄(メトロ)に乗って』を読んでしまっ
ていたので違和感はなかったが、初版当時の浅田
次郎はデビュー作『とられてたまるか!』や、『キンピカ』、
『プリズンホテル』など、仁侠モノのユーモア路線で売れ出
した頃だったので、この『日輪の遺産』はかなりの
路線変更と見られたらしい。

浅田次郎自身あとがきで書いているが、先の仁侠
ユーモア路線が自分のカラーになりつつあって、これを
打破するために書いたそう。

そして、この『日輪の遺産』が、その後の『地下鉄
(メトロ)に乗って』、『蒼穹の昴』につながり、こちらを
生涯のテーマにしていきたいという。

しかし、北上次郎氏も指摘していたが、先の『キンピ
カ』系が別物だというわけではない。

それよりもむしろ“浅田文学”の根底に流れるもの
は一貫しているのだとわかる

日本人の忘れた「日本人としての矜持」とでも言お
うか、日本人の心の琴線に触れる言葉が、そこか
しこに散りばめられているのだ。

ただ、その言葉がどれかは人によって異なるのか
もしれない。

自分が「映画を見てみたい」と思ったのは、自分に
とってのそれが、劇中に出てくるかどうか確かめて
みたいと思ったからだったりもする。

『映画日輪の遺産公式サイト』

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