2012年09月30日

「雨月」に思う月探査

「雨月」に思う月探査

「中秋の名月」が見られるはずだった今夜、残念ながら関東地方は台風17号の影響で、お月見どころの騒ぎではなくなってしまいました。

すすきやお団子の準備をしたのに…という方もいらっしゃることでしょう。

タイトルの「雨月」は、今夜のように中秋に雨が降って月が見えないことをこう呼びます。
また、雨が降らなくとも雲に隠れて見えない時は「無月」と呼ばれます。

さて、ご存じの通り、月は地球の唯一の衛星で、約1ヶ月かけて地球の周りを1周(公転)しています。

ということは、単純計算で年に12回満月が見られることになります。

なのに、何故この時期(旧暦の8月15日)の満月だけが、「中秋の名月」などと呼ばれ、特にもてはやされるのでしょうか?

その理由は、月の高さと、天気だったのです。

太陽の通り道は、はわれわれから見ると夏は高く、冬は低く見えますよね。
月の通り道も太陽とほぼ同じなんですが、満月の時というのは月は地球から見て太陽の正反対にあることになる(90度の位置にあるときが半月)ので、太陽とは逆に、夏は低く、冬は高いんです。

そこで、ちょうど見上げるのに適した高さの満月となると、春か秋ということになる、と。
ところが、春は「春がすみ」などと言われるように、月が霞んで見えることが多いので、「秋晴れ」という言葉もある通り、比較的天気の良い秋が月見のシーズンとなったと言われています。

ちなみに、旧暦8月15日を「中秋」と呼ぶのは、秋(旧暦の7月~9月)のちょうどど真ん中の日だからで、中国、韓国、台湾では中秋節として祝日にもなっており、盛大にお祝いする日なんだそうです。

皆さんも中華街などでお土産に買われたことがあるだろう「月餅」というお菓子は、まさにこの月見の時に食べるお菓子だったんですね。

日本では、里芋などの芋類や団子、すすきをお供えする風習がありますが、芋を供えるのは中秋の名月が里芋の収穫祭の意味合いを持つことから、すすきは供えたものを軒下に吊しておくと、一年病気をしないという言い伝えからだそうです。

お団子は、旧暦の月の数だけお供えするというのが一般的で、平年は12個、閏月のある年は13個お供えするというのが風習になっています。

とまぁ、「中秋の名月」のウンチクなど書かせていただいたわけですが、このところ宇宙に興味津々の自分ですので、天文学的な月に関するおはなしもひとつ。

アームストロング船長と2人の乗組員を乗せたアポロ11号が、今を遡ること43年前の1969年7月20日、人類初の月面着陸に成功したのは皆さんご存じの通り。

「雨月」に思う月探査
アポロ11号による月面着陸 (画像提供:NASA)

その後、1960年代半ばから1970年代半ばにかけて、実に65回もの月面着陸が行われたのですが、1976年のルナ24号(ソ連の無人探査機)を最後にぱたっと止まってしまったのでした。

それ以降、ソビエト連邦は金星と宇宙ステーション、アメリカ合衆国は火星や、もっと遠い惑星を目指すようになったというのが理由のようです。

ところで、日本はというと…

残念ながら、日本の宇宙開発にとって、月は近くて遠い星でした。

しかし、「SELENE」と呼ばれる計画が始まり、2007年9月にやっと日本初の大型探査機「かぐや」が打ち上げられると、はなしは一気に加速していきます。
(「かぐや」は、2009年の6月に役目を終えるまで、月の裏側に関する貴重なデータの収集に成功しました)

「雨月」に思う月探査
月探査機「かぐや」観測時のイメージ (画像提供:JAXA)

SELENA計画は、更に「SELENE2」に引き継がれ、日本初の有人探査に向けて、2010年代半ばには月面着陸機の打ち上げが予定されており、さらに2020年までに有人月探査、2030年までに月面基地の建設を計画…と、凄まじい勢いの追い上げ(?)を見せているのです。

背景には21世紀に入って、アメリカやロシア、インド、中国、EU各国が月探査を本格化させていて、国際協力による月面基地や月面天文台の建設プランが活発になっているということがあるようです。

SELENE2のために開発する高精度の着陸技術や天体内部の調査技術は、世界的に見ても最先端のものだそうで、成功すれば先の月面基地や月面天文台の建設に、かなりの貢献が期待されます。

まだまだ予算的な問題とかもあるようですが、いよいよ日本でも有人の月面探査が目標として見えてきたというのは嬉しいことですね。

お月見の情緒は大切にしたいですが、リアルな月に日本人が降り立つ姿もとても楽しみです。

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この記事へのコメント
台風が去った後深夜1時ころ燦然と輝くお月様見ました。すごーく綺麗でこんなに光り輝いている月を見たのは初めてです。Ug君にも見せてあげたかった。月にはウサギが居るってお月見していたのに、月面基地や月面天文台が出来ちゃうなんて人間て本当に凄いですね(^_-)-☆
Posted by Hi-Ko at 2012年10月01日 16:49
見てみたかったなぁ。

宇宙の広さを思うと、月は本当に地球のすぐそばにあるのに、われわれにはこんなに遠い。

科学なんてまだまだその程度の進歩なんだと、つくづく感じます。

でも、個人的には、科学が進んで月に行けるようになったとしても、「うさぎが餅つきをしている」月を眺めている今の方が幸せな気がする。
Posted by ugug at 2012年10月01日 23:44
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