宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4」
Super Moon (画像提供:NASA)

いつまで続く“奇跡の星”シリーズ、今夜は第4弾『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2』で書けなかった、地球が月という衛星を持ったことの奇跡についておはなししたいと思います。

もし月がなかったら、地球の気候は極端に不安定になっていたというおはなしです。


宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4」

地球が太陽の周りを公転しながら、およそ24時間で1回転の自転をしているのは皆さんご存知だと思いますが、同じように太陽などの恒星や地球以外の惑星も自転しています。

しかし、その周期はバラバラで、例えば金星は243日という非常に長い周期で自転しています。

一方、巨大な木星の自転周期は、わずか10時間足らずです。

惑星の自転周期は、その惑星が誕生するときの偶然の要素で決まると考えられています。

もし、地球の自転が金星と同じだったら、昼が約120日間、夜が約120日間続くことになります。

そうなると、昼側の半球では水が蒸発して砂漠化し、逆に夜側の半球は冷え切って氷に覆われてしまいます。

ということは、液体の水が存在できるのは、朝や夕方の状態になっている一部の領域に限られることになり、生命にとってとても好ましい環境とは言えません。


宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4」

また、地球の地軸(北極と南極を結ぶ線のこと。自転軸ともいう)は、地球の公転面に対して23.4度傾いていますが、この地軸の傾きも、惑星が出来るときの偶然の要素で決まるとされています。

例えば、天王星の地軸の傾きは約98度で、ほぼ横倒しの状態で公転しています。

一方水星の傾きはゼロです。

この地軸の傾きが、惑星に季節の変化をもたらしているわけですが、地球の場合、北極が太陽の方を向いているときが、北半球の「夏」で、太陽がより高いところから照りつけ、昼の時間も長くなります。

逆に、南極が太陽の方を向いているときが、南半球の「夏」で、北半球は「冬」になるわけです。

宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4」

こうした季節の変化は、地軸の傾きが大きければ大きいほど極端になります。

地軸が90度傾き、横倒しで公転している天王星のような惑星の場合、夏には太陽が沈まず、冬には太陽が昇りません。

当然、夏はより暑くなり、冬はより寒くなることになります。

偶然生まれた自転の速度、そしてこれまた偶然の地軸の傾きが、美しい四季のある地球を作ってくれたというわけです。

これも「奇跡」と言って良いでしょう。

ところで、地球の地軸の傾きは、実は一定しているわけではありません。
およそ4万年の周期で、プラスマイナス1度ほど変動しているのです。

これは止まりそうになったコマが見せる首振り運動(歳差運動)の影響と、木星など他の惑星の重力が合わさることで起こります。

火星の地軸は現在約25度傾いていますが、計算によると数万年の周期でプラスマイナス10度も変動すると言われており、ときには60度も傾くことがあったそうです。

ということは、それだけ大規模な気候変動が繰り返されてきたということで、これも生命にとって、望ましい環境ではありません。


宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4」

さて、ここからが月の与える「奇跡」の本題です。

では、なぜ地球には火星のような激しい地軸の変化が起こらないのか…

それこそが、地球の持つ巨大な衛星「月」の働きだったのです。

火星も2つの衛星(フォボスとダイモス)を持っていますが、大きい方のフォボスでも、火星の直径の1/300しかありません。

これに対して、月の直径は地球の直径の1/4もあり、太陽系の他の惑星が持つ衛星に比べて、母惑星に対する割合がすごく大きいのです。

宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4」
Earthmoon system (画像提供:NASA)

巨大な衛星を持つことが、どういう影響を及ぼすかというと…

地球が月からの重力(引力)を受けると、月に近い側と遠い側でとでは重力の強さが異なるため、地球を変形させる力が働きます。

これによって地球の潮(海水)の満ち引きが起こるわけですが、これを潮汐力(ちょうせきりょく)と呼びます。

母惑星に対しての割合が大きな月は、巨大な潮汐力を地球に及ぼすため、それが地球の地軸の傾きを安定させてくれているのです。パチパチ。

こうして月が与えてくれている恩恵を考えると、先日の中秋の名月の「お供え」も、月への感謝といった意味に変わってくるかもしれませんね。

というわけで、4夜にわたって書いてまいりました「奇跡の地球」シリーズ。

実はまだ続きがあるのですが、さすがにこれだけ書いてると、自分でも「満腹」な感じがします。

とりあえず今回はこのくらいにしておいて、気が向いたらまた続きを書いてみます。
それでは、また。

『宇宙のはなし「太陽系1」』
『宇宙のはなし「太陽系2」』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)1
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)3』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4』
『宇宙のはなし「天体の距離」』

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この記事へのコメント
本当に私たちが生きていくって
凄いことですよ(^_-)-☆

地球にとって、月、太陽、その他の惑星みーんな大切なんですものね!(^^)!
Posted by Hi-KO at 2012年10月11日 22:32
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