星のきれいな季節だから…宇宙のはなし「天体の距離」
画像提供:NASA

星のきれいな季節がやってきましたね。
星空を見ていたら、久しぶりに「宇宙のはなし」を書きたくなりました。

あそこに見えている星まで、いったいどれくらいの距離があるのだろうか?
そんな疑問を持ったことはないですか?

この太陽系はとても広く感じますが、宇宙全体からすれば、非常に狭い範囲だということは、『宇宙のはなし「太陽系1」』で書きました。

今回は、この広さがどんなものなのか、天体の距離についておはなししながら考えてみたいと思います。

まず、地球から一番近い天体である「月」はどれくらい離れているのか。

星のきれいな季節だから…宇宙のはなし「天体の距離」
Earth and Moon as Seen from Mars (画像提供:NASA)

地球と月の距離は、約38万キロメートルで、人間が五感で感じられる全てのものの中で、もっとも速いと言われる光の速さ(秒速30万キロメートル=1秒間に地球を7周半する)で1.3秒かかります。

次に、地球に一番近い恒星(自分で光る星)である太陽はどれくらいでしょうか?

地球からだと、月と同じくらいの大きさに見えるので、距離も同じくらいかな?と思う人もいるでしょうが、実際は1億5000万キロメートルも離れたところにあります。
太陽までは、光の速さで8分20秒かかります。

言い換えれば、われわれが見ている太陽の光は8分20秒前のもので、もし仮に今太陽が突然なくなってしまったとしても、われわれは8分20秒の間そのことに気づかないということになります。

ちなみに、天体の距離を表すために、この地球と太陽の距離を「1天文単位(1AU)」として基準にしています。

では、太陽系の中で一番遠い惑星である海王星はどれくらいかというと、実に43億5000万キロメートル(30.3AU)も離れています。
この距離になると、光速でも4時間もかかります。

ところで、みなさんは1977年にNASAが打ち上げた惑星探査機ボイジャー1号、2号を覚えているでしょうか?

え?生まれていなかったって?
確かに、今から35年も前のことですから、生まれていなかった方も多いでしょう。

星のきれいな季節だから…宇宙のはなし「天体の距離」
Voyager (画像提供:NASA)

実はこのボイジャー1号、2号は、今もなお惑星の探査を続けています。

ボイジャー計画は、太陽系の外惑星と、太陽系外の探査を目的とした計画で、惑星配置の関係により、木星・土星・天王星・海王星を連続的に探査することが可能なタイミング(1977年)を利用して打ち上げられました。
(この機会を逃すと、次に木星~海王星がきれいに並ぶまで175年も待たなければならなかったそうです。)

ボイジャー1号は現在、太陽系を出ようとしていますが、2011年8月の時点で、地球から170億キロメートル(118AU)の距離を秒速10キロメートルの速度で進んでいます。

星のきれいな季節だから…宇宙のはなし「天体の距離」
Voyager 1 Encounters Stagnation Region (画像提供:NASA)

詳細は機会があれば書くとして、このボイジャーに今指令を出す(電波も光の一種)と、実に15時間以上もかかることになります。
ですから、ボイジャーに「おーい」と言って返事が返ってくるまでに、30時間以上もかかることになるわけです。

先日書いたばかりですが、「はやぶさ」が訪れた小惑星「イトカワ」はどうかというと、地球と火星の間の3億2000万キロメートル離れた場所にあり、光速で18分ほどの距離ということになります。

とまぁ、ここまで太陽系の中の惑星の距離について書きましたが、では、われわれが夜空の「星」としてみている「恒星」はどれくらい離れているのでしょうか?

太陽以外で地球に一番近い恒星は、ケンタウロス座プロキシマ星ですが、近いと言っても4.2光年も離れた場所にあります。

ここで突然、先ほどまでと単位が変わったのにお気づきかと思いますが、これくらいの距離になると○キロメートルでは桁数が大きくなりすぎてしまうので、もはや光の速さで「何年かかるか」という単位になってきます。

ちなみに、1光年は約9兆4600億キロメートルという距離になります。

(太陽以外で)一番近い恒星であるケンタウロス座プロキシマ星でも、もし先のボイジャーで行こうとしたら、なんと10万年以上もかかってしまう計算です。

つまり、今の技術では、太陽系から一番近い恒星でさえ、そこに行くことは不可能なのです。

ところで、ケンタウルス座プロキシマ星が「太陽以外で一番近い恒星」と言いましたが、近いなら一番明るいだろうと思ったら大間違いです。
ケンタウルス座プロキシマ星は、発見されたとき、それまで見つかった恒星の中で一番暗かったそうです。

では、地球から見た太陽以外でもっとも明るい星は?というと、“冬の大三角形”のひとつとして知られるおおいぬ座アルファ星シリウスで、こちらは8.6光年離れたところにあります。
一番近い恒星であるケンタウロス座プロキシマ星の倍以上の距離ということになります。

さて、ここで冒頭の「われわれは8分20秒前の太陽の光を見ている」を思い出してください。

これをケンタウロス座プロキシマ星に置き換えると、「われわれは4.2年前の光を見ている」ということになります。

つまり、遠くの星を見ると言うことは、「過去の宇宙を見ている」ということになるわけです。

何気なく見上げている夜空の星ですが、実はわれわれが生まれる前、いや、地球の誕生よりも遥か遠い過去の光だったりするということです。

では、現在どれくらい遠くの(過去の)星が見えているのかというと、観測技術の発達=望遠鏡の発達により、なんと300億光年先の銀河まで見えています。

光の速さで300億年もかかる、途方もない過去の星を見ているということです。

ここで「あれ?」と思った方もいることでしょう。

そうです、宇宙が誕生してから137億年なのに、なぜ300億光年も先の星が見えるのか?

それは、「宇宙が膨張している」からなのです。

星のきれいな季節だから…宇宙のはなし「天体の距離」

これには「宇宙の始まり」について説明が必要なんですが、こちらについてはまた後日気分が乗ったときに書いてみるとして、観測の結果から宇宙は誕生以来、今もなお膨張していることがわかっています。

ですから、光を見るとき、その光源がそこにとどまっていれば、137億光年よりも前の宇宙は見えないわけですが、光源がどんどん遠ざかっているので137億光年よりも前の宇宙が見えるのです。

今のところ人類が見ることができたのは、宇宙誕生から約6億年後の銀河までだそうですが、今後更に観測技術が進めば、きっと宇宙の始まりを見ることも可能になるでしょう。

われわれは常に「今」を生きていて、遺跡のように風化して動かないものでしか過去を見ることはできないと思っていますが、星を見上げればそこには「今この瞬間に瞬く過去」を目の当たりにすることができるんですね。

とまぁ、こんな長文を書きたくなったのは、自分がこれらのことを知ったとき、それまでと星=宇宙の見え方がまったく違ってしまったからで、みなさんにも是非教えたくなったからでした。

残念ながら今夜は空が曇っていて、星はほとんど見えないようですが、晴れた日の夜空を眺めながら、今夜のはなしを思い出してくれたら、ちょっと星の見え方が変わってくるんじゃないでしょうか。

『宇宙のはなし「太陽系1」』
『宇宙のはなし「太陽系2」』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)1
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)3』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4』

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この記事へのコメント
本当に星が綺麗に見えるようになりましたね。オリオン座とってもよくみえますね。十三夜も近くなり月も丸くなってきましたね。300億光年なんて予想もつかない・・・宇宙って果てしないし星の数も銀河も・・・でも星ってロマンチックですね(^_-)-☆
Posted by Hi-Ko at 2012年10月26日 14:08
>>HI-KOさん

其れ天地は万物の逆旅にして
光陰は百代の過客なり

でございますよ、まったく。
Posted by ug at 2012年10月26日 22:38
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