「美味しんぼ」鼻血問題のその後…5/19発売号特集記事まとめ

『「美味しんぼ」の波紋が収まらない…あなたは同調?異論?』で書きました、シリーズの完結編であり、一連の騒動の特集記事が掲載された5月19日号が発売になりました。

19日は都内での仕事だったのですが、私の入ったコンビニでは既に『ビッグコミックスピリッツ』が売り切れていまして、メディア等での報道の影響もあってか、関心の高さを感じました。
ちょっと騒ぎすぎじゃね?と思っていた私は、他のコンビニや書店を探し回るようなことはしなかったのですが、たまたま本日立ち寄ったコンビニに2冊ほど残っていたので、迷った挙げ句購入してみました。

気になっていたのは、前回書きました作者のブログでの発言

「特にその24(5/19発売号)ではもっとはっきりとしたことを言っているので、鼻血ごときで騒いでいる人たちは、発狂するかも知れない。」

の部分だったのですが、私が読んだ限り“発狂する”ような表現はなく、鼻血以上の衝撃的な記述は見あたりませんでした。

「美味しんぼ」鼻血問題のその後…5/19発売号特集記事まとめ

気になる特集記事の方ですが、小学館言うところの「識者」13名と、双葉町、福島県庁、大阪府・大阪市の3つの自治体の意見が全文掲載されています。

「美味しんぼ」鼻血問題のその後…5/19発売号特集記事まとめ

せっかくなので、一通り肯定派と否定派に分けて、ごく簡単に紹介してみます。

肯定派(擁護派)

小出裕章
氏 京都大学原子炉実験所助教(原子核工学)

「鼻血」は科学的には立証できないが、可能性がないとは言えない。
国や電力会社、大手マスコミが、今も危険が存在するという事実を伝えない現状では、そうした活動(美味しんぼの一連のストーリー)は大切です。

崎山比早子
氏 医学博士 元・東電福島原発事故調査委員 元・放射線医学総合研究所主任研究官

政府の「年間20ミリシーベルト以下であれば安心」の根拠がわからない。放射線が安心なのは「線量ゼロ」の時だけ。低線量のリスクを無視する政府や専門家は問題視する意見を封殺しようとしている。

津田敏秀
氏 岡山大学教授(疫学、環境医学)

チェルノブイリでも福島でも鼻血の訴えは多いことが知られている。低線量放射線と(鼻血)の「因果関係がある」という証明はあっても「因果関係がない」という証明はされていない。文句を言う人の方が、むしろ放射線を特別視して不安をあおっている。

野呂美加
氏 NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」代表

低線量で鼻血が出ることはチェルノブイリでは日常。「鼻血が出た」と言ったらダメなのか?言論封殺することで、自由な議論や意見の発表の場が阻害されれば、被爆がより深刻化しかねない。

肥田舜太郎
氏 医師(広島原爆被爆者の治療にあたった)

被爆によって受ける影響には個人差があり、何ベクレルまでなら大丈夫という基準は絶対にない。今の医学では放射線による影響を解明しきれていない。鼻血などの症状を訴える人がいるという事実は報道すべき。

矢ヶ崎克馬
氏 琉球大学名誉教授(物性物理学)

100ミリシーベルトどころか、その100分の1、1000分の1でも健康被害が起こる。放射線が鼻粘膜に当たれば「分子切断」が起こり鼻血が出る。今回の「美味しんぼ」についてはきちんとした視点から、非常に勇気を持って報じている。

青木理
氏 ジャーナリスト ノンフィクション作家

(メディアが)ここまで批判的に取り上げるのは“過剰”で問題が多く、作品の正当な評価がなされているとは言い難い。問題の本質は原発事故であり、表現だけを批判するのは、ただの言葉狩りに過ぎない。


否定派

安斉育郎
氏 立命館大学名誉教授(放射線防護学)

個人差もあるが、一度に1シーベルト(1000ミリシーベルト)を超えなければ倦怠感は現れない。原発事故から5週間後の浜通りを8時間北上して測定したが、被曝線量は22マイクロシーベルト(0.00022シーベルト)だった。原発の見学は短時間なので被曝線量はもっと少ないはず。取り上げられた内容は的が外れている。

遠藤雄幸
氏 川内村村長

鼻血については(漫画に登場する)井戸川前双葉町長以外、そうした症状を呈している人を見たり聞いたりしたことがない。健康被害についてはあくまでも科学的・医学的検証に基づいて語って欲しい。多くの読者のいる雑誌の一言一言は重い。風評は瞬く間に広がるが、それを打ち消すには長い時間と費用を要する。

大阪府・大阪市
 週刊ビッグコミックスピリッツ「美味しんぼ」に関する抗議文

(災害廃棄物の)処理期間中や処理後においても放射能濃度や空間放射線量率、その他必要な項目について十分な測定を行い、結果はHPにおいて公表しているが、すべて受け入れ前後で変化はなく、安全に処理していることを確認している。よって「美味しんぼ」記載のような健康被害はない。具体的根拠の提示を求め、場合によっては法的措置を講じる。

玄侑宗久
氏 作家 臨済宗福聚寺住職

福島市に暮らしていて現在の放射線量は年間1ミリシーベルト程度。原発の近隣地区はともかく、福島県全体に人が住めないなどという話は冷静さを欠いた感情論としか思えない。会津地方よりも放射線量の高い地域は全国に無数にある。原発の是非と放射能の問題は分けて考えるべき。

野口邦和
氏 日本大学歯学部准教授(放射線防護学)

福島県内で被爆を原因とする鼻出血が起こることは絶対ない。事故直後から現在に至るまで、福島県内でそのような高線量の被爆をする状況はない。「その22」と「その23」は、「福島県の真実」と称しながら、「福島の現実」から人々の目をそらし、福島県の復興に水を差すものでしかない。

蜂須賀禮子
氏 元・東電福島原発事故調査委員 大熊町商工会長

主人公の浴びた放射線量で鼻血が出ると言うことはあり得ない。どの程度の知識を持って取材に臨んだのか甚だ疑問を抱く。この作品を放射線についての知識を持たない人が読んだらどう思うのか。とても腹が立った。

福島県庁

県民の健康面への影響に関しては、国、市町村、医療関係機関、国連科学委員会等の国際機関との連携の下、様々な検査を通して、原発事故により放出された放射性物質に起因する直接的な健康被害が確認された例はない。農林水産物の風評被害克服など、県や県民、各団体が一丸となって復興に向かう中、今回の「美味しんぼ」の表現は、福島県民やそれを支援する国内外の人間をことさら深く傷つけるものであり、極めて遺憾。

双葉町

現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はない。復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせているほか、双葉町民のみならず福島県民への差別を助長させることになると強く危惧している。双葉町への取材もなく、一方的な見解のみを掲載した小学館の対応に厳重に抗議する。

◆中間派

山田真
氏 医師 子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク代表

鼻血について、2011年3月~11月に、福島、北海道、福岡の3地域の小学1年生を対象に調査を行ったが、最も多かったのは福岡で福島は一番少なかった。原発事故の影響で鼻血が増えているという事実はなかった。「美味しんぼ」中の鼻血が出るメカニズムの説明は無理がある。低線量被爆では体の表面よりも、目に見えない体内の変化が怖い。福島県民の避難を訴えるのは正論だが、現実には難しい問題を抱えている。国がすべきは実態調査の実施。



とまぁ、13人と3自治体の意見をまとめてみましたが、問題となった「鼻血」については否定的な意見が多かったものの、低線量の放射線の影響についてはまだわからない部分も多いらしく、「絶対」と言えないのが現状なのかな?と感じました。

とはいえ、原発事故がなくても、われわれは宇宙線などからの外部被爆で年間0.9ミリシーベルト近く、食物や空気中のラドンなどから1.5ミリシーベルト程度の放射線を浴びているんですよね。

玄侑宗久氏の意見の中にありましたが、生涯被曝量という考え方だと、原発事故の影響で追加される被曝量は、多い人で約10ミリシーベルト程で、これまでおよそ150ミリシーベルトだったものが約160ミリシーベルトになる程度だそうです。

それよりも、実は1964年以降中国がウイグル自治区で行ってきた、核爆発実験での放射性物質の総放出量はチェルノブイリ事故の約500万倍であることがわかってきたという話の方が怖い。

黄砂やPM2.5ごときで騒いでいる場合じゃないという気がします。

まぁ、鼻血と放射性物質の因果関係は別として、結局肯定派は、原発事故の影響について国をはじめ国民全体の関心が薄れてしまっていることに対して、「美味しんぼ」が問題提起したことの意義を訴え、反対派は福島の風評被害を助長し、復興に水を差すような表現に腹を立てているという事なんだと思います。

いずれにしても、うやむやなままこの問題を風化させてしまうのではなく、山田氏の意見にあるように、きちんとした実態調査をするべきなんじゃないでしょうか。

正直、メディアやネット上の過剰なまでの反応にはウンザリでしたが、原発事故と放射能について考える良い機会にはなったのではないかと思います。

ところで、原作者である雁屋哲氏のブログの件ですが、「反論は、最後の回まで,お待ち下さい」のまま、まだ更新はされていないようです。

「美味しんぼ」鼻血問題のその後…5/19発売号特集記事まとめ

今回の特集記事で「編集部の見解」も掲載されていますので、また事を荒立てるような記事を書く必要はないんじゃないかと思うんですけどねぇ。


追 記 (5/22)

本日雁屋哲氏のブログ『今日もまた』の更新がありました。

『色々と』というタイトルの記事には「反論」はなく、取材申し込みに対しての返事と、休載についての説明だけでした。

取材申し込みに対しては、「まだ冷静な議論をする状況にない」という理由から、先延ばししたいという回答でした。

雁屋氏は現在外国にいて7月まで戻れないとのことですので、それ以後になるのでしょう。

また連載休止については、メディアで報じられていたように「事前に決まっていた」ということのようです。

唯一話題に触れていたのは、

「その22」で鼻血の件を書いたところ、反響が大きく、熱心な愛読者の方からは「圧力に負けないで勇気を持って書き続けて欲しい」というお便りを数多く頂きました。
ご心配頂いた読者の方には申し訳ないのですが、その段階で原稿は書き上げてあり、作画もできあがっていたので、圧力に負けようにも負けようがなかったのです。

という部分ですが、やはり思った以上に「圧力」を感じていたようですね。

まぁ、7月頃までこの話題が続いているとは思えないので、一連の騒動については、これにて一件落着というところでしょうか。


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