2009年06月08日

トワイライト

トワイライト

「アヒルと鴨のコインロッカー」を書いた後、近所のワングーに本を漁りに行っ
たのだが、お奨めの作品が積まれたコーナーではなぜか伊坂幸太郎
が気になってしまう今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?

次の作品を読んだら凄くハマっちゃったりするかも…

たまたまこれまで読んだ2冊が自分に合わなかっただけでは…
と、期待している自分がいて、つい手にとってしまう。

オイオイ、ちょっと待て、これじゃあまるで「あと1000円分回せば大当
たりするかも?」と財布がすっからかんになるまで止められないパチ
ンカーみたいじゃないか。

よしんば当たったとして、

「好きじゃないなんて言ってましたけど、『グラスホッパー』おもしろかっ
たですぅ!!前言撤回、これからは“ファン”を自称させていただきすぅ!!」

だなんて、女子高生じゃあるまいし、「しばらくは読まないと思う」と
偉そうにのたまった舌の根も乾かぬうちに、こっ恥ずかしくて書けた
もんじゃない。

ていうかワングーの本売り場で、いい歳こいたメタボおやじが、本を手に
取ったり置いたり、また手に取ったり置いたりと、たかが文庫本1冊
に逡巡していること自体相当恥ずかしいはずだ。

自己嫌悪に陥った自分はお奨めコーナーを離れ、迷う必要のない重松
清の棚へと向かう。

「そうだ、自分は次は重松…と書いたのだ、有言実行、何が何でも
重松作品を買って帰るのだ!!」

と、意味不明な使命感で買ってきたのがこの『トワイライト』

前置きが長くなったが、支離滅裂なほどに一貫性のなさを売りにし
てきた(?)当ブログが、いつの間にか単なる読書日記になり下がりつ
つある現状を自覚しつつ、やはり読書日記しか書くことの出来ない
自分に対するストレス発散の乱筆と生温く見守っていただきたい。

さて、『トワイライト』だが、先日読んだ石田衣良の『40フォーティ 翼ふたた
び』
同様、“アラフォー世代”を主人公にした物語だ。

表紙のイラスト…EXPO'70のシンボルタワー、故岡本太郎作「太陽の塔」…
に見るように、舞台設定はまさに我ら世代のそれであり、いろんな
意味で共感できるところの多い作品だった。

小学6年生の時に埋めたタイムカプセルを開けるため、26年ぶりに再会
したクラスメートの決して楽しいことばかりではない…というか、苦しい
事ばかりと言って良いようなストーリーなのだが、だからこそよりリアルに
登場人物達の気持ちを感じ取ることが出来た。

時代もあるのかも知れないが、この歳になると、現実は楽しいこと
より苦しいことの方が多い。

夢を失った我々世代の日常を、太陽の塔と重ね合わせ“未来の残
骸”と表現するところも上手い。

高度経済成長時代に育った我々世代は、社会はずっと右肩上がり
の成長を続ける=どんどん幸せになっていくものだと思っていた。

しかし、いつしかそれが幻想であったことに気づき、家庭を持ち、社
会の中核を担う世代になると、逆に酷い閉塞感を感じるようになる。

生活苦、家族の崩壊、リストラの不安…etc.

現代社会の抱える問題を描く重松作品の真骨頂は、こうした苦しい
話題を取り上げながら、『40…』のような陽気なエンディングを用意しな
いところだ。

誰もが少なからず問題を抱えている。

それとどう向き合い、どう立ち向かっていくか…

結局は、自分でどうにかするしかないのだよと教えられている気が
した。

…なんて、ちょっとマジっぽくてかっちょわり。

同じカテゴリー(ほんのはなし)の記事画像
なめんなよ♡いばらき…『茨城のおきて』を検証してみた(後編)
なめんなよ♡いばらき…『茨城のおきて』を個人的に検証してみた
“鉄板”の名著『ワイルド・スワン』
これで向こう10年は本選びに悩まない…『面白い本』
デキる男がやっている「やる気の出る脳の使い方」
もうすぐ確定申告…『税務署員だけのヒミツの節税術』
同じカテゴリー(ほんのはなし)の記事
 なめんなよ♡いばらき…『茨城のおきて』を検証してみた(後編) (2014-08-13 01:40)
 なめんなよ♡いばらき…『茨城のおきて』を個人的に検証してみた (2014-08-12 02:41)
 “鉄板”の名著『ワイルド・スワン』 (2014-07-02 02:00)
 これで向こう10年は本選びに悩まない…『面白い本』 (2014-05-22 20:00)
 デキる男がやっている「やる気の出る脳の使い方」 (2014-03-03 01:16)
 もうすぐ確定申告…『税務署員だけのヒミツの節税術』 (2014-02-22 02:40)
この記事へのコメント
まとまってんだかまとまってないんだかよくわからないけどなんとなくまとまっているという、流行のヤナーチェクのシンフォニェッタみたいなブログですね。
Posted by 万城目 淳万城目 淳 at 2009年06月08日 18:14
>>万城目 淳さん

流行というヤナーチェクどころか、シンフォニェッタすら知らないので微妙な感じで
すが、お褒めいただき(いただいてない?)ありがとうございます。

sspブログを書いていた時のような、内容はともかく、表現することが楽しく
て何千字でも書けてしまったあの頃が、懐かしくも愛おしい今日この頃で
ございます。

日々の暮らしの中では気づかないのですが、こうして見ると確実に自由
になる時間が減っているのですね。

自分がそうでないから憧れるのですが、ものを書くために一日を送るよう
なインテリゲンツィアな生活をしてみたい。

そういう意味では、万城目さんは理想です。
Posted by ug at 2009年06月10日 03:22
「トワイライト」もちろん読んでますよ~
もう内容を忘れつつあるくらい前に(^^;)

そうそう、そう言う話でしたね!
最近長女が重松作品にハマっております
(と言うか、私がハマらせた?!^^;)
小6の国語の教科書にものってるんですよ!

ugさんにせっかくお借りして読んだのに、
「きみの友だち」買っちゃいましたもん(笑)

重松さんの本は、大人になってから読むのと
子供のうちに読むのでは捉え方が違ってくる
と思うんです。長女も今読んで、大人になっ
てからもう一度読んで欲しいですね~
Posted by you-co at 2009年06月10日 09:49
>>you-coさん

読んでますよねぇ。

なんせ2001年には文庫化してるんだもの。

>重松さんの本は、大人になってから読むのと
>子供のうちに読むのでは捉え方が違ってくる
>と思うんです。

「きみの友だち」なんて、ほんと子どもと大人では全然感じ方が違っ
ちゃう作品でしょうねぇ。

ていうか、重松作品てそういうことを書いているものが多い気がする(笑
Posted by ugug at 2009年06月12日 02:39
コメントフォーム
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。