救われねぇ!!…『疾走』他

6/21の記事に書いたように、この歳になるまで
殆ど読んだことのなかった「小説」ですが、その後
も興味は衰えず、僅かな時間を見計らっては今で
も毎日欠かさず読み続けてます。
主に近所の某チェーン店で文庫本を漁っているのだ
けれども、最近は特設コーナー(?)に「スタッフのお奨め」
みたいなPOPが目立ちますね。

特別贔屓の作家や好みのジャンルがあるというわけ
でもない自分は、結構そんなPOPに釣られてしま
うのです。

一冊目の『世界の終わり あるいは始まり』(歌野
晶午著 角川文庫)
はまさにPOPに惹かれました。

救われねぇ!!…『疾走』他

「今までのミステリーに飽きた人へ!ドキドキ・ハラハラが
大好きな人へ!」のコピーに、真っ赤な影付太字で
「オススメ!」なんて念を押されたら、相当面白いん
だろうなと思うのが心理でしょ。

で、買いました。

読みました。



騙されたました、と。

絶対POPを書いた店員はこの本読んでいないね。

そもそもミステリーじゃないし。

多分、角川文庫の売り文句をそのまま書いたんだ
ろうと思います。

内容的には、幸せに暮らしていた主人公の父親
が、ある日近所で起こる連続誘拐殺人事件の犯
人が息子ではないかという疑念を抱くことから始
まります。

疑念が確信に変わると、そこからは主人公の妄
想の世界が延々と続きます。

悪夢から覚めるとまた次の悪夢へ…といった感じ。

正直、この時点で読んでいる自分は何が真実な
のかわからずイライラするばかりでした。

一通り再生したビデオを巻き戻して編集し、また再
生…って感じでうんざりしてしまうのです。

でもって、肝心の結末部分は脳天気な上に、真相
がどうなのかまったく曖昧なまま終わってしまう。

これは、先日読んだ『さくら』同様、かなり消化不
良な読後感ですよ。

自分的には全然ダメな本なんですが、結末次第で
は逆の評価もあり得たのに、と思うと残念です。

さて、二冊目…というか、上下巻に分かれている
ので正確には二冊目と三冊目。

↑の『世界の終わり…』と同時に、今となっては
まったく信憑性のなくなったPOPを見て購入した
ものです。

『疾走』(重松清著 角川文庫)

救われねぇ!!…『疾走』他

昨日の日記で「おまえは…」と書き出したアレです。

期せずして↑の作品と、それまでの平和な一家
がある事件をきっかけに崩壊していくという点で
一致していたのでした。

しかし、作品の出来はまったく違いました。

こちらの主人公は14歳の少年シュウジ。

シュウジの兄であり、優秀で両親の自慢の息子だっ
た長男シュウイチが犯した事件をきっかけに一家が
崩壊していきます。

壊れた兄と次々に逃げ出していく家族。

残ったシュウジを襲う不幸は苛烈を極め、最後まで
救われることがありません。

そんな絶望的な現実と闘う少年の姿は哀れで、
悲しくて、読んでいてまったくもってツライのですが、
それでも引き込まれて、時間があったら一気に読
み切ってしまっただろう作品でした。

たった15年という短い人生を疾走したシュウジ…

最後まで救われることのなかったシュウジ…

ラストでは涙が止まらず、誰かにバレないか心配に
なるほどでした。

素晴らしい作品に出会えました。

さすが直木賞作家、贔屓にしたいと初めて思いま
した。

調べたところこの『疾走』は、従来の重松清作品
と比べてやや異質らしいですが、そんな“従来の”
重松作品も読んでみたいと思っています。

『疾走』…皆さんも是非読んでみて下さい。

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