宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」
The blue marble (画像提供:NASA)

昨日に続いて“奇跡の星”地球のおはなしです。

前回、「太陽からの程よい距離」「適度な大きさ」「太陽の絶妙な大きさ」といった条件が奇跡的に重なったおかけで、地球が生命種にあふれる星となったと書きました。

しかし、地球の奇跡はこれだけではありませんでした。

それを説明するために、『宇宙のはなし「太陽系1」』で書いた、原始太陽についてもう少し詳しくおはなしします。


宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」

原始太陽系円盤のなかで、のちの地球となる原始惑星、いわゆる原始地球は無数の微惑星と衝突・合体しながら成長を続けました。

さらに、他の原始惑星との巨大衝突を数回経験したと考えられています。

微惑星や原始惑星が原始地球に衝突すると、大量の熱が発生し、岩石惑星である地球の岩石は溶けてマグマになります。

また、微惑星や原始惑星に含まれていた水蒸気が地球を覆い、水蒸気の温室効果によって地球の表面温度はさらに上昇します。

その結果、地球の表面はマグマの海(マグマ・オーシャン)で覆われました。

マグマは数千年で冷え、水蒸気は雨となって地表に降り注ぎ、水の海を作りますが、別の微惑星や原始惑星が、また地球に衝突します。

これを繰り返し、地球はどんどん大きくなっていったのです。

原始地球が出来ておよそ4000万年後、地球の運命を激変させる大事件が起こります。

現在の火星ほどの大きさの、巨大な原始惑星が地球に衝突したのです。

これをジャイアント・インパクトといいます。

宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」
Planetary Smash-Up (画像提供:NASA)

それまでの十数回におよぶ原始惑星との衝突の最後を飾る。地球史上最大の天体衝突でした。
その衝撃によって、地球は内部まで加熱され、中心付近まで達するマグマの海が作られました。


宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」

また、衝突ではぎ取られた地球の一部が砕け散って、他の巨大原始惑星の破片とともに、地球を取り囲む円盤となります。

これらが、1ヶ月ほど掛けて重力で集まると、新たな天体が誕生しました。

それが、地球の衛星であるです。

出来たばかりの月は、地球から2万キロメートルしか離れていなかったそうですが、次第に遠ざかり、現在は38万キロメートルのかなたにあります。

(2011年にジャイアント・インパクトの後、大小2つの月が出来、さらにそれらが衝突して現在の月になったという説が発表されています。)

こうして地球は衛星である月をもつようになったわけですが、これがまた地球にとっての奇跡だったのです。

これについての説明はちょっと長くなるので、次回書くことにします。


宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」

こうしてマグマのかたまりとなった地球は、1億年ほどすると表面が冷えて固まります。

しかし、まだ内部は熱く、岩石に含まれていた揮発成分がガスとなって放出され、二酸化炭素や水蒸気、窒素を成分とする大気が作られます。

ただし、このときの大気圧は地表で100気圧にも達していたそうです。

さらに、大気中には大量のチリが混じっていて、太陽の光は地表まで届かず、地上は灼熱で暗黒の世界でした。

さて、微惑星や原始惑星との衝突を繰り返していた地球は、ジャイアント・インパクト以降、そうした衝突は次第に減っていきました。

ところが、今から41億年前ごろから、ふたたび小天体の落下が激しくなりました。

これが38億年前頃まで続いたとされており、小天体の落下が集中したこの時期を後期重爆撃期と言います。

宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」
A Storm of Comets (画像提供:NASA)

最初に原始地球が出来た頃の衝突と区別するために「後期」と付けられました。

多数の小天体が地球に衝突したことによって、いったん出来た固い地表(地殻)が破壊され、ふたたびマグマ化します。

現在までに見つかっている地球最古の岩石が38億年前のもで、それ以前のものが見つからないのは、この衝突が原因だろうとされています。

また、この小天体は、地球だけでなく月にも降り注ぎ、その痕跡が月のクレーターだと言われています。

宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」
Crater 308 on the Moon (画像提供:NASA)

アポロ計画によって持ち帰られた月の岩石を分析したところ、その形成年代が41億年前から38億年前に集中していることもわかっています。

と、この後期重爆撃期について長々と話してきたのは、これもまた地球にとっての奇跡だったからなのです。


宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2」

後期重爆撃期が地球にもたらした奇跡とは、「水」でした。

地球に落下した小天体には氷が多く含まれていて、この氷が最終的に雨となって降り注ぎ、海(水の海)ができたと考えられているのです。

『宇宙のはなし「太陽系2」』で書いたように、地球を形作った微惑星はもともと氷を含んでいませんでした。

これに対し、後期重爆撃期で降り注いだ小天体は、小惑星あるいは彗星だろうと予想されており、これらはいずれも、太陽から遠いところでできた微惑星がもとになっているので、氷を多く含んでいるのです。

前回書いたハビタブルゾーンや、適度な大きさの惑星といえども、水そのものがなければ「液体の水」を持つ星にはなれません。

「水の惑星」とも言われる地球、その大量の水をもたらし、広大な海ができたのは、まさにこの後期重爆撃期のおかげなのです。

さて、こうして海ができると、地球にはさらに劇的な変化が起こります。

大気中の大量の二酸化炭素が海水に溶けて炭酸カルシウムとなり、それが石灰岩として海底に堆積、固定されるようになったのです。

二酸化炭素が減った大気は温室効果が下がり(現在の地球温暖化の逆ですね)、地球は冷えていきます。

すると今度は、大気中の水蒸気が液体の水に変わります。

水蒸気も温室効果をもたらす物質なので、それが減ることで、地球の温度はさらに下がっていきます。

その結果、青い海と青い空を持つ地球が生まれ、生命誕生の準備が整ったのです。

めでたし、めでたし……で、終わりではありません。

実は、さらにさらにわれわれ生命が誕生するための地球の奇跡は続きます。

今回も長くなってしまったので、さらに続編を。

『宇宙のはなし「太陽系1」』
『宇宙のはなし「太陽系2」』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)1
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)2』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)3』
『宇宙のはなし「奇跡の地球(ほし)4』
『宇宙のはなし「天体の距離」』

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