イプシロンロケットって?

本来なら↑のような姿で飛び立つはずだった、JAXAのイプシロンロケット。

姿勢異常を検知し、打ち上げ約19秒前に自動停止してしまったのは、8/27のニュースでみなさんご存知でしょう。
イプシロンロケットって?
この状態で停止中

7年ぶりに行われることになった、内之浦宇宙空間観測所からの打ち上げを見ようと、鹿児島県肝付町には、なんと1万5千人もの人が集まったらしいです。

肝付町の人口が約1万7000人といいますから、実に人口の9割もの見物客が訪れたというわけで、町の人たちも「こんなのは初めて」と驚いていたそうですが、打ち上げ中止にも「こんなのは初めて」だったかもしれません^^;

実はこの内之浦宇宙空間観測所で前回(2006年)打ち上げられたのが、“奇跡の生還”の「はやぶさ」だったのです。

同町は映画「はやぶさ」のロケ地にもなっており、たぶんにこうした影響でこれだけの見物客が訪れたのでしょう。

仕切り直しの再打ち上げは来月になるようですが、果たして次回もこれだけの人が集まるのでしょうか?

イプシロンロケットって?

と、前置きが長くなりましたが、私の関心は打ち上げではなくて、この「イプシロンロケット」とは、一体どんなロケットで、どういう目的で打ち上げられるのかということです。

既にご存知の方も多いと思いますが、イプシロンロケットとは、JAXAの開発する高性能と低コストの両立を目指す新時代の固体燃料ロケットのこと。

我が国が世界に誇る固体ロケット技術の集大成であり、ペンシルロケットからM-Vロケットに至るまでの半世紀に蓄積された知恵と技術の全てが込められています。

最大の目的は、ロケットの打ち上げをもっと手軽なものにし、宇宙への敷居を下げようというところ。

例えば、これまでロケットの打ち上げには、地上での点検や組み立てに膨大な人手と時間が必要でした。

M-Vロケットの場合、第1段ロケットを発射台に立ててから打ち上げまでに、実に2ヵ月近く(42日)もかかっていたのです。

今回のイプシロンロケットでは打ち上げシステムの革新により、世界のロケットの中でも最短、わずか一週間で行えるようになったそうです。

イプシロンロケットって?
国産ロケットの比較

もちろんコスト面でも相当な低コスト化を実現していまして、打ち上げ費用(開発費ではない)はM-Vの75億円に対して、38億円と、ほぼ半額となっています。(ちなみにH-ⅡBロケットは147億円掛かります)

この打ち上げシステムの革新が最大のポイントで、「ロケットの知能化」と言われていますが、イプシロンでは搭載機器の点検をロケット自身が自律的に行うように出来ています

世界中のどこにいても、ネットワークにただノートパソコンを接続するだけでロケットの管制が可能となるシステムなのです。

この打ち上げシステムはモバイル管制と呼ばれ、世界で最もコンパクト、かつ射場に依存しない究極の管制システムであり、もちろん世界でも初めての試みで、未来のロケットのお手本になるものだと言います。

ところで「固体燃料ロケット(固体ロケット)」とはどんなものかというと、これは文字通りロケット本体に充填した固体燃料を使用するロケットのことで、一般的な液体燃料ロケットのようにポンプなどの機械部品で燃料を燃焼室に移送することなく、ロケット内部の燃料へそのまま点火する仕組みのロケットのことを言います。

簡単に言うと、ロケット花火のようなものですね。

固体ロケットは、上述の通り、一度点火されると液体燃料ロケットのような制御ができないので、イプシロンにはオプションとして液体ロケット並みの軌道投入精度に対応するための小型液体推進系も搭載されています。

さて、イプシロンの説明だけでも相当長くなりましたが、このロケットのミッションについてです。

言い換えれば、積まれているものは何?ということでもあります。

ロケットの打ち上げばかり騒がれていて、肝心のミッションが何なのかみんな知らないんじゃないでしょうか?

今回打ち上げられる予定のイプシロンに積まれているのは、惑星分光観測衛星(SPRINT-A)と呼ばれるもので、地球を回る人工衛星軌道から金星や火星、木星などを遠隔観測する世界で最初の惑星観測用の宇宙望遠鏡です。

イプシロンロケットって?
SPRINT-AのイメージCG  1m×1m×4mの小さなサイズです

宇宙望遠鏡といえば、アメリカのハッブル宇宙望遠鏡など、高性能な宇宙望遠鏡が既に運用されていますが、それらはさまざまな天体の観測に用いられるため惑星観測に充てられる時間は限られてしまいます。

また、特定の惑星専用の探査機を飛ばせば、非常に高精度なデータは得られるものの、高額の費用がかかり、目的の惑星以外の観測は困難になってしまいます。

対象を太陽系内の惑星観測に限定すれば、ハッブル宇宙望遠鏡のような高性能なものは必要ではなく、小型の安価な宇宙望遠鏡ならば、複数の惑星を継続的に観測できるという利点があるのだそうです。

私は宇宙そのものに興味はあるけれども、ロケットにはあまり関心がないので、是非この宇宙望遠鏡からの映像や、成果を期待したいなと思っています。

というわけで、今回は話題となったイプシロンについて書いてみたわけですが、9月のいつになるかはまだハッキリしていないようですが、再打ち上げの際には↑のようなことを参考にしていただくと2倍楽しめるのではないでしょうか。

久し振りの宇宙ネタでしたが、また長くなってしまいましたね^^;

※記事内の写真はJAXAのものを使用しています

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