2008年09月08日

『流星ワゴン』

『流星ワゴン』

文庫本で500頁弱という長編小説を、自分がたっ
た2日で、それも殆ど夜だけで読破してしまった。

相当面白かったということだ。

「本の雑誌」で年間第1位に選ばれた作品だけの
ことはあった。
いつものことながら、あまりに人工的な気がして
ディテールに不満の残る部分はあるのだが、そんな
ことはどうでも良くなるくらいに引き込まれ、最後
まで一気だった。

リストラ、妻の不倫、息子の家庭内暴力.....幸せだっ
たはずの家庭はいつしか歯車が狂い、崩壊寸前。

「死んじゃってもいいかなあ、もう・・・」と呟く38歳
の主人公一雄が、5年前に事故死した父子の乗
るワゴン車に乗り込むところから物語は始まる。

ワゴン車は一雄の人生の岐路となる場所で止まり、
一雄は“やり直しの現実”に連れて行かれる。

そこで一雄と同い年の“大嫌いな”父と出会う。

一雄と息子、一雄と父、事故死した橋本親子、3
組の父子の関係を中心に物語は展開する。

父は息子のことを思いながらも、息子の本当の
心を理解できず、息子も父の気持ちを理解できず
・・・

親子愛がテーマのこの作品は、大抵の子を持つ親
なら涙なしには読めないという。

自分は.....少し泣いた。

ただ、自分は、父子や家族というシチュエーションを抜
きにして、人生の「やり直し」・・・現実と向き合い、
これを受け入れて前へ進むこと・・・をしてみよう
という気持ちを喚起させられた。

そして気づいた。

そうか、重松作品に自分がハマった理由はここに
あったのだな、と。

重松作品の殆どは、イジメや不登校、家庭崩壊な
ど、現代の社会問題をテーマにしているが、最後に
必ず救いというか、現実を受け入れて前に進む
姿が描かれている。

そこが魅力なのではないかと思う。

なので、今となれば、最後の最後まで救いのない
『疾走』が“重松作品の中では異質”と言われるの
も理解できる。

「後悔」を燃料に走る流星ワゴン-過ぎ去ってしま
ったことは何ひとつ変えられないが、問題に気づ
いたところからやり直すことができる。

たとえそこがサイテーでサイアクの場所であっても、そ
こから未来は変えられる・・・

現実に多少でも問題を抱えている人なら、きっと
読んで損はない本だと思う。

『流星ワゴン』

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この記事へのコメント
こんにちは!
先程はコメントありがとうございました(^^)
気にしていただいてうれしいです(*^-^*)

『疾走』から重松作品に入って、その後すぐ
くらいに『流星ワゴン』読みました。読了して
かなりたっているにもかかわらず、かなり鮮明に
覚えています。

でも、ugさんの文章力すごいですね。私もこんな
ふうに書けたらいいんですが(^^;)

後日、読了本お借りしに行きます。あ、違った、
カットお願いに行きます(^^)
Posted by you at 2008年09月08日 10:58
>>youさん

あ、どうも。

記事のタイミングがバッチリだったので、ついコメント入れて
しまいました。

そうだよね、重松作品の主たるところは押さえてる
だろうなぁ、と思った。

文章力・・・

いえいえ、とんでもない。
読み返して、赤面してしまう文章をどれほど書いて
きたかわかりません。
実は、この記事もアップしてから2度ほど読み返して
校正してたりします。

でも、昔より文章力がアップしたのは、まさに3年間
毎日書いていたsspブログのおかげです。
良いこともあるんですね。
Posted by 代表ug代表ug at 2008年09月08日 14:41
やったね!流星ワゴン。

自分の中でも、ベスト1です。

自分はこれを38才の時にに検査入院のベットで読みました。主人公の考えがめちゃくちゃリアルに感じられました。
今でも、思い返すと涙が出ちゃいます、、、うるるるる、、、
Posted by 栄ちゃん栄ちゃん at 2008年09月08日 16:18
>>栄ちゃん

栄ちゃんも読んでいたとはなぁ。

38歳の時に読むってのが、感情移入しまくりで
良かったのかな。

オレはね、「なんで親子は同じ歳で出会えないんだ
ろう。同じ歳で出会ったら間違いなく友だちになれ
るのにね」というところが好き。

ただ、これを読んでも、父親とは上手く話せないけ
どな。ハハハ。
Posted by 代表ug代表ug at 2008年09月08日 18:28
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