2013年12月25日
『宇宙に外側はあるか』
子どもの頃から、タイトルのようなことを考えていた記憶があります。
「無限」というものが理解できず、「空の果てはあるんだろうか?」「果てがあったとしたら、その外側はどうなっているんだろうか?」…と
そんなことを思い出し、タイトルだけ見て即買いしてしまった2012年2月初版の新書です。
松原隆彦氏の著書は、今年の1月に『宇宙のダークエネルギー』を読ませてもらいました。
読後感想でも書いているように、それまで平易な宇宙論の本ばかり読んでいた私には、正直難しすぎて理解できないところの多い本でした。
しかし、今回の著書は、これとはまったく逆で、非常に読みやすく、理解しやすい本でした。
また、先日の『宇宙になぜ我々が存在するのか』のように“期待はずれ”ということもありませんでした。
全5章からなる本書は、第1章が「初期の宇宙はどこまで解明されているか」、第2章が「宇宙の始まりに何が起きたのか」、第3章が「宇宙の形はどうなっているのだろうか」、第4章が「宇宙を満たす未知なるものと未来の宇宙」、そして、第5章がタイトルともなっている「宇宙の外側はあるか」となっています。
前半の第1章、第2章、第3章までは、これまで人類は宇宙の構造をどのように解明してきたのか、ざっとその歴史を振り返ります。
私の言う“平易な本”で語られてきた部分もあり、おさらいをするように読ませていただきました。
しかし、本著の醍醐味は第4章、第5章にあります。
第4章は、「宇宙を満たす未知なるもの」と言われるダークエネルギーの解説ですが、上述の『宇宙のダークエネルギー』と違って、非常にわかりやすく、また、楽しく書かれています。
その第4章から、ダークエネルギーがとり得ると考えられている性質を3つに分け、それぞれの異なる将来の可能性を予言している部分が興味深いので、これを簡単に紹介してみます。
宇宙が加速的に膨張し続けると、遠くの銀河までの距離はどこまでも大きくなり続け、そのうち宇宙の地平線を越え、それら銀河の存在さえわからなくなります。
一方、比較的近くにある銀河は、合体して一つの超巨大銀河になると考えられています。
アンドロメダ銀河は今から数十億年後に天の川銀河と衝突、合体して巨大な一つの銀河になると言われています。
さらに数千億年後には、局所銀河群全体が合体して一つの超巨大銀河になり、他の銀河は完全に視界の外に追いやられて、この超巨大銀河は宇宙で完全に孤立することになります。
ただしその前に、太陽系は百数十億年ほどで燃え尽きてしまい、他の恒星やこれからできる恒星も、次々と燃え尽きたり超新星爆発を起こしたりした後、輝きを失っていきます。
はるか数十兆年後には、新しく星を作る材料が宇宙空間に枯渇し、ほとんど輝かない天体ばかりが残された星の墓場のようになってしまうでしょう。
比較的大きな銀河の中心部にはフブラックホールがあると考えられていますが、このブラックホールも合体して超巨大ブラックホールになるものの、いずれそれも蒸発してなくなってしまいます。
宇宙の膨張が極限まで続けば、何の活動性もない希薄な宇宙がただただ膨張し続けるだけという、事実上の死を迎えます。
ダークエネルギーから宇宙を加速させる力が失われ、減速膨張する宇宙になるとそのまま永遠に膨張するか、収縮に向かうかの2通りが考えられますが、膨張する場合は↑とさほど変わりません。
膨張が止まり収縮に向かうと、宇宙の運命はこれとまったく異なります。
先ほどとは逆に銀河と銀河の距離が縮まっていき、あちこちで衝突して合体します。
この時の衝撃で星がたくさん誕生し、銀河の中心にあるブラックホールも合体するでしょう。
さらに収縮が進むと銀河は重なり合って、独立して存在できなくなり、宇宙全体が一つの銀河のようになってしまうでしょう。
もっと収縮が進めば宇宙マイクロ波背景放射の温度が高くなりすぎて、宇宙全体が非常に高温の状態となります。
このため星は表面から蒸発していきます。
そして、宇宙全体の密度が大きくなって、ダークマターや通常物質およびブラックホールで満たされます。
最終的には、ビックパン宇宙の運命の逆をたどり、際限なく密度も温度も高くなり、元素は壊されて素粒子に分解し、収縮する宇宙は終わりを迎えます。
この終わりの時点は、爆発(ビッグバン)の逆の「瀑縮」という意味の「ビッグクランチ」と呼ばれます。
その先は物理学ではよくわからない領域に突入し、空間や時間もなくなり「その後」自体も消滅してしまうかもしれません。
瀑縮の後、宇宙が跳ね返り、またビッグバンになるという説もあるようです。
3つめの可能性は、宇宙を加速する力が将来さらに大きくなっていき、最終的に宇宙の膨張速度が無限大になってしまうという破滅的な場合です。
宇宙の加速が行きすぎると、これまでと異なり、銀河自体が膨張し始めます。
銀河をひとまとまりにしている、星やダークマターの重力を上回る力を、ダークエネルギーが持ち始めることになります。
銀河の中にある星々はバラバラと宇宙空間にばらまかれてしまい、銀河は宇宙に存在しなくなります。
そんな状態がしばらく続いた後、ダークエネルギーの支配力は星自体にも及びはじめます。
今度は星自体を膨張させ始め、星を構成している物質は宇宙空間にばらまかれます。
この連鎖は止まらず、物質も膨張して原子に分解され、さらにこれ以上分解できないという素粒子にまでバラバラにされてしまいます。
最終的に宇宙全体の加速が行きすぎると、膨張速度は無限大となり、もはや時空間が存在できなくなり、宇宙自体が破滅します。
その先には時間が続いていないため、それを考えることは宇宙の始まりを考えるようなもので、時間がなければ「その先」もなくなります。
というものですが、いかがでしょうか?
なかなかシリアスな話ですが、万一宇宙に終わりが来るとしても、それは1兆年先とかの話であって、直接われわれに関係するものではないようです。
そして、最終章の第5章「宇宙に外側はあるか」になるわけですが、長くなりすぎたので、本日はここまでということで^^;
『宇宙に外側はあるか』松原隆彦著:光文社新書
松原隆彦氏の著書は、今年の1月に『宇宙のダークエネルギー』を読ませてもらいました。
読後感想でも書いているように、それまで平易な宇宙論の本ばかり読んでいた私には、正直難しすぎて理解できないところの多い本でした。
しかし、今回の著書は、これとはまったく逆で、非常に読みやすく、理解しやすい本でした。
また、先日の『宇宙になぜ我々が存在するのか』のように“期待はずれ”ということもありませんでした。
全5章からなる本書は、第1章が「初期の宇宙はどこまで解明されているか」、第2章が「宇宙の始まりに何が起きたのか」、第3章が「宇宙の形はどうなっているのだろうか」、第4章が「宇宙を満たす未知なるものと未来の宇宙」、そして、第5章がタイトルともなっている「宇宙の外側はあるか」となっています。
前半の第1章、第2章、第3章までは、これまで人類は宇宙の構造をどのように解明してきたのか、ざっとその歴史を振り返ります。
私の言う“平易な本”で語られてきた部分もあり、おさらいをするように読ませていただきました。
しかし、本著の醍醐味は第4章、第5章にあります。
第4章は、「宇宙を満たす未知なるもの」と言われるダークエネルギーの解説ですが、上述の『宇宙のダークエネルギー』と違って、非常にわかりやすく、また、楽しく書かれています。
その第4章から、ダークエネルギーがとり得ると考えられている性質を3つに分け、それぞれの異なる将来の可能性を予言している部分が興味深いので、これを簡単に紹介してみます。
宇宙が加速的に膨張し続けると、遠くの銀河までの距離はどこまでも大きくなり続け、そのうち宇宙の地平線を越え、それら銀河の存在さえわからなくなります。
一方、比較的近くにある銀河は、合体して一つの超巨大銀河になると考えられています。
アンドロメダ銀河は今から数十億年後に天の川銀河と衝突、合体して巨大な一つの銀河になると言われています。
さらに数千億年後には、局所銀河群全体が合体して一つの超巨大銀河になり、他の銀河は完全に視界の外に追いやられて、この超巨大銀河は宇宙で完全に孤立することになります。
ただしその前に、太陽系は百数十億年ほどで燃え尽きてしまい、他の恒星やこれからできる恒星も、次々と燃え尽きたり超新星爆発を起こしたりした後、輝きを失っていきます。
はるか数十兆年後には、新しく星を作る材料が宇宙空間に枯渇し、ほとんど輝かない天体ばかりが残された星の墓場のようになってしまうでしょう。
比較的大きな銀河の中心部にはフブラックホールがあると考えられていますが、このブラックホールも合体して超巨大ブラックホールになるものの、いずれそれも蒸発してなくなってしまいます。
宇宙の膨張が極限まで続けば、何の活動性もない希薄な宇宙がただただ膨張し続けるだけという、事実上の死を迎えます。
ダークエネルギーから宇宙を加速させる力が失われ、減速膨張する宇宙になるとそのまま永遠に膨張するか、収縮に向かうかの2通りが考えられますが、膨張する場合は↑とさほど変わりません。
膨張が止まり収縮に向かうと、宇宙の運命はこれとまったく異なります。
先ほどとは逆に銀河と銀河の距離が縮まっていき、あちこちで衝突して合体します。
この時の衝撃で星がたくさん誕生し、銀河の中心にあるブラックホールも合体するでしょう。
さらに収縮が進むと銀河は重なり合って、独立して存在できなくなり、宇宙全体が一つの銀河のようになってしまうでしょう。
もっと収縮が進めば宇宙マイクロ波背景放射の温度が高くなりすぎて、宇宙全体が非常に高温の状態となります。
このため星は表面から蒸発していきます。
そして、宇宙全体の密度が大きくなって、ダークマターや通常物質およびブラックホールで満たされます。
最終的には、ビックパン宇宙の運命の逆をたどり、際限なく密度も温度も高くなり、元素は壊されて素粒子に分解し、収縮する宇宙は終わりを迎えます。
この終わりの時点は、爆発(ビッグバン)の逆の「瀑縮」という意味の「ビッグクランチ」と呼ばれます。
その先は物理学ではよくわからない領域に突入し、空間や時間もなくなり「その後」自体も消滅してしまうかもしれません。
瀑縮の後、宇宙が跳ね返り、またビッグバンになるという説もあるようです。
3つめの可能性は、宇宙を加速する力が将来さらに大きくなっていき、最終的に宇宙の膨張速度が無限大になってしまうという破滅的な場合です。
宇宙の加速が行きすぎると、これまでと異なり、銀河自体が膨張し始めます。
銀河をひとまとまりにしている、星やダークマターの重力を上回る力を、ダークエネルギーが持ち始めることになります。
銀河の中にある星々はバラバラと宇宙空間にばらまかれてしまい、銀河は宇宙に存在しなくなります。
そんな状態がしばらく続いた後、ダークエネルギーの支配力は星自体にも及びはじめます。
今度は星自体を膨張させ始め、星を構成している物質は宇宙空間にばらまかれます。
この連鎖は止まらず、物質も膨張して原子に分解され、さらにこれ以上分解できないという素粒子にまでバラバラにされてしまいます。
最終的に宇宙全体の加速が行きすぎると、膨張速度は無限大となり、もはや時空間が存在できなくなり、宇宙自体が破滅します。
その先には時間が続いていないため、それを考えることは宇宙の始まりを考えるようなもので、時間がなければ「その先」もなくなります。
というものですが、いかがでしょうか?
なかなかシリアスな話ですが、万一宇宙に終わりが来るとしても、それは1兆年先とかの話であって、直接われわれに関係するものではないようです。
そして、最終章の第5章「宇宙に外側はあるか」になるわけですが、長くなりすぎたので、本日はここまでということで^^;
『宇宙に外側はあるか』松原隆彦著:光文社新書
Posted by ug at 02:40│Comments(0)│ほんのはなし
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